第168章 隙

「この子、顔色が悪い。まぶたはむくみ、唇の色も抜けている。脈は細くて速いのに力がない……病歴は少なくとも2年以上」

池田暁月は、淡々と続けた。

「私があの日出した処方は、気を補って血を養うもの。気血を一時的に持ち直させるだけで、根本は治せない。だって根本の問題は、気血虚じゃない。腎不全よ」

女の号泣は喉の奥で引っかかった。口を開けたまま、涙だけが頬を伝う。顔に浮かぶのは悲憤ではなく、硬直した恐怖だった。

男は段ボールを掲げた手が震え、ふらりと二度ほど揺れて、落としそうになる。

池田暁月は立ち上がり、その夫婦を見下ろした。琥珀色の瞳に怒りはない。ただ、ぼんやりと焦点の合わない視線で、...

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