第50章 心を尽くす

彼女があれほど会いたくて仕方なかった「青峰の旦那」が、いまは池田暁月のすぐ隣に立っていた。わずかに頭を垂れ、暁月の言葉に耳を傾けている。

手は彼女の腰の後ろへ――触れはしない。指先一寸ぶんの距離を残したまま、そっと虚空を支える。

けれど、その庇うような姿勢は、よそ者が割り込める余地のない形だった。

池田花依はシャンパンのグラスを手に、その場から動けない。淡い泡が、かすかに揺れる。

池田暁月。

また、池田暁月。

青峰デザインの社長。父が三日三晩かけてようやく掴んだという、その謎の裏の人物――その男が、いま暁月の隣で、まるで当たり前のように立っている。

花依の指が、きゅっとグラスを...

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