第64章 試合

19年後、池田暁月が戻ってきた。

自分の立場が揺らぎ始めた今、彼女にはもう一度「羽化」が必要だった。

池田暁月という脅威を打ち砕き、宮本家で自分が手にしてきたすべてを守り抜くために。

 宮本明珠は目を開き、描き始める。

 線が、指先からするすると流れ出していく。

 彼女が描いているのは、幾筋もの糸に絡め取られた繭。

 その殻には無数の細かな亀裂が走り、裂け目の奥からは光がにじみ出ていた。

 内側のなにかが、閉じ込めている殻を少しずつ押し広げている――そんな一枚。

 ここまで淀みなく描けるのは、池田暁月の下描きを何枚かこっそり記憶し、自室で何度も繰り返し練習してきたおかげでもあ...

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