第69章 毒を盛る

皆が「お爺様が怒り出す」と身構えた、その瞬間だった。

お爺様はただ、声を落として尋ねた。

「おまえ、手――熱くなかったか」

池田暁月はちらりと彼を見る。

「なってない」

「そうか」

お爺様はうなずく。まるで、彼女がうっかり水をこぼしただけだと言わんばかりに、落ち着いた口ぶりだった。

新井怜は信じられないと目を見開いた。

声は甲高く震え、傷ついた怒りが露骨に滲む。

「お父様! その子、あなたの燕の巣をひっくり返したんですよ? 一言もお咎めなしなんですか。これは私が自分で厨房に頼んで、あなたのために煮させたのに……目の前で叩き落とすなんて、新井家を舐めてるとしか思えません!」

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