第73章 心のわだかまり

宮本正言は椅子の背にもたれ、無意識に指先で机をとん、とんと叩いていた。

今夜、新井飛鳥に言われたあのひと言――『次女さんを、暁月さんに近づけないでください』――が、頭の中で何度も何度も繰り返される。

彼はもともと、冷静で自制の利く男だ。

他人の二言三言で、簡単に心を揺らされたり、考えを変えたりすることはない。

だが今は違った。

これまで見過ごしてきた細かな欠片が、勝手に脳裏でつながり、重なり、一つの像を結び始めている。

そして、その輪郭がはっきりするほど、どうにも気分が悪くなった。

そのとき、書斎の木の扉が、こん、こん、と遠慮がちに二度叩かれた。

ひどく軽い音だった。様子をう...

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