第74章 加賀廷悟が手を出す

池田健永はリビングのソファに沈み込み、ローテーブルの灰皿を睨んでいた。すでに吸い殻で山になっている。

スマホをソファへ放り投げる。画面は点いたまま、未着信の履歴がずらり――全部、自分からかけたものだ。だが相手は一件も出ない。

仕入れ先も出ない。銀行の担当も出ない。以前は肩を組んで酒を飲んだ同業者でさえ、「今ちょっと立て込んでて」と言い訳を並べはじめた。

池田家の商売は、崖から突き落とされた石みたいだった。落ちるしかない。止まる道がない。

「……まだ、連絡つかないの?」

池田夫人が落ち着かない顔で近寄ってくる。

池田健永は答えない。苛立ちを隠しもせず、灰皿の横に置いてあった冷めかけ...

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