第78章 彼女のために

池田暁月は教室の三列目、中央の席に座っていた。

窓から差し込む斜めの陽光が横顔に落ち、冷ややかな輪郭だけを淡い金色に縁取っていく。

白いシャツ。髪は後ろで適当に束ねている。

机には教科書が開かれ、さっきページをめくっていたときと何一つ変わらない表情のまま。

彼女は手を上げ、淡々と言った。

「はい」

新井飛鳥の視線が、ほんの一瞬だけ止まる。

口角が――気づく者などほとんどいないほどの微かな動きで、すっと上がった。

そして彼はすぐに目を落とし、出席簿にチェックを入れて、次の名前を読み上げる。

けれど、その瞬間から教室の空気が変わった。

誰もが、あの「間」を見たのだ。

宮本明...

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