第81章 彼女を知らない

「……君は、誰?」

 新井飛鳥は眉をひそめ、目の前の少女をまるで見覚えがないという顔で見た。

 池田花依の胸に、ずしりとした挫折が落ちる。

 ――そうだ。飛鳥は私を知らない。健永に編んで聞かせた嘘の中では、もうとっくに「私たち」は始まっていたのに。

 花依は奥歯を噛みしめ、何事もないふりで柔らかく微笑んだ。

「池田花依と申します。暁月の姉で、池田家の実の娘です。……つい最近、戻ってきたんです」

 その言葉に、周囲がざわりと小声を交わし始める。

 池田暁月の出生の話は、元から興味本位の餌だった。憶測は憶測を呼び、好き勝手に尾ひれがついていた。

 新井飛鳥は、暁月と二人でいる時間...

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