第85章 決勝戦

彼女は首を傾げて彼を見た。窓の外を流れていく木々の影が、頬の上で明滅を繰り返す。その清冽な瞳の奥で、何かが一瞬だけ光った気がした。

「ありがとう」

新井飛鳥は答えない。

彼は自分側の窓へ視線を移し、口元の弧だけを消さなかった。

決勝会場の控室裏。相馬彩芽は、もう気が狂いそうだった。

大型スクリーンではカウントダウンが残り10分を切り、決勝進出者たちが順番に壇上へ上がって作品を披露している。

宮本明珠はすでに登壇していた。作品がスクリーンいっぱいに展開された瞬間、客席のあちこちから抑えきれない感嘆が漏れる。

映っていたのは、棘に絡め取られた一本の手。棘は一本、また一本と折れ...

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