第88章 偽り

審査員席で、髪の白くなった審査委員長がゆっくりと老眼鏡を外した。

両手を組んで机の上に置き、大型スクリーンを長いこと見つめている。

 唇がわずかに動いた。独り言のように。

 それから、ひと言だけ口にした。声は大きくない。だがマイクは入っていて、劇場中にその声が響いた。

 「この若者は、停電していた3分間で、記憶だけを頼りに一枚を描き切った

 色の移ろいも、構図の均衡も、光と影の積み重なりも――すべて頭の中に入っていて、ひとかけらも落としていない。審査員を30年やってきたが、こんなものは見たことがない」

 「満点」

 「満点」

 ……

 審査員たちは一人ずつ札を上げた。準決勝...

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