第89章 裂け目

相馬彩芽は、きょとんと目を瞬かせた。どういうわけか、気づけばその花束を受け取っていた。

 普段の彼女なら、宮本明珠のことなど一番嫌っているはずだった。なのに今は、なぜかほんの少しだけ、親しみめいたものを覚えてしまう。

 宮本明珠からは、ふわりと淡い香水の匂いがした。きつくない。やさしい桜を思わせる香りだった。

 相馬彩芽は手元の花を見下ろし、それから宮本明珠を見上げた。唇がかすかに動く。

 「ありがとう……私は大丈夫。それより、どうしてわざわざ花なんて? 自分の作品展示の準備をしてるはずじゃないの?」

 「さっき、下からあなたが落ちるのを見て、すごくびっくりしたの」

 宮本明珠の...

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