第90章 露見

笑みは淡かった。口角がごく浅く弧を描くだけ。眉骨がわずかに落ち、目が細められる。その唇のカーブには、普段の彼女には決してない――ふっと肩の力が抜けたような緩さが混じっていた。

相馬彩芽は、視線を落とす。

廊下の白熱灯はぎらつくほど眩しい。光と影が氷の刃みたいな境目をつくり、行き交う生徒たちの笑い声や騒ぎ声が耳に届くたび、なぜだかやけに甲高く刺さった。

彩芽は静かに、前を歩く二人を見つめる。肩を並べて進む背中。背筋はすっと伸び、呼吸まで噛み合っているような空気。まるで、誰も入り込めない一枚の絵。

胸の奥で、細かな酸っぱさが幾重にも波打っては込み上げる。さっきまでいっぱいだった浮き立つよ...

ログインして続きを読む