第93章 疎遠

だが、新谷若夜の涙はそのまま零れ落ち、音もなく池田暁月の肩口の布をじわりと濡らした。

玄関口には宮本志遠と宮本亜蘭が立ったまま、近づこうとしない。

母娘にとって滅多にない温もりの時間を邪魔したくなくて、二人は示し合わせたように足を止めていた。視線の奥に、簡単には言葉にできない複雑さを宿しながら。

宮本亜蘭は頭を掻き、目の奥がつん、と熱くなるのをごまかした。

池田暁月は、新谷若夜の気持ちが落ち着くまで抱きしめたまま待ち、ようやく呼吸が整ったのを見てからそっと腕をほどいた。

急かさない。問い詰めない。

ただ黙って、感情が着地するまでの時間を与える。

そして宮本亜蘭が、事情を一通り説...

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