第96章 守られる

池田暁月はそう言い切るや、宮本正言の反応を待つこともなく、ひとり階段を下りていった。

速くも遅くもない歩み。木の階段を「コツ、コツ」と鳴らす足音は、さっきの言葉の調子と同じく、ひどく淡々としていた。

宮本正言は廊下に立ったまま、彼女が踊り場の角へ消えるのを見送る。

怒るべきなのだ。

明珠が救急から出て、まだ数日。手首の包帯すら外れていないというのに、池田暁月は「彼女は自殺なんてしないと思う」と、まるで他人事みたいな口ぶりで言ったのだから。

それでも、怒りは湧かなかった。

宮本正言はその場を動けず、明珠の部屋のドアノブに手を置いたまま立ち尽くす。指先に触れる冷たい金属の感触が、じわ...

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