第140章 藤崎蓮が高橋美桜を覗き見る

田中啓は慌てて口を滑らせたことを訂正した。「失言でした。そうだ、社長、桐生グループとの契約書ですが、まだ高橋美桜のところにあります。私、腹が痛くてトイレに行きたいのですが、ご自分で彼女に訊いていただけますか?」

「ん」男は無表情に一言だけ返し、相変わらずの冷淡さだった。

田中啓のゴシップ好きの心臓は、ドキドキと高鳴った。笑いを必死にこらえてオフィスを出ると、この社長もよくもまあ装うものだ、と心の中で思った。高橋美桜に声をかけたいなら、そうはっきり言えばいいものを。こっそり見ているだけで何になるというのか?

覇気に満ち溢れ、英明にして神武なるわが社長殿が、いつからこんな……内気になられた...

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