第351章 若様と女を奪い合う勇気はない

「野村恵子が、吐血した?」

 部屋にいた全員が、その言葉に呆然とした。

 真っ先に反応したのは高橋美桜だった。

「まさか」

「本当です。門のところで、大量に血を吐いて……」

 報告に来た警備員の顔色は優れない。

 高橋美桜は小声で呟く。

「ありえないわ。頬を一度叩かれただけで吐血なんて? 冗談でしょう」

 妙だ。さっきまで野村恵子はピンピンしていたのに、どうして急に吐血などするのか。まさか、ゆすり目的の狂言だろうか?

「私が見てくるわ」

 言いながら、高橋美桜はすでに立ち上がっていた。

「私が行くわ」

 桜井明穂がそれを制止する。

「あなたはここにいて。あの野村恵子のことだから、...

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