第1章
夜の帳が下り、古城の輪郭が月光の下でひときわ不気味に浮かび上がる。システムアナウンスが全プレイヤーの耳元で響いた。
『SSS級特殊ダンジョン【国王の晩餐会】が開放されました。危険度★★★★、クリア予測率19.136%。現在の視聴者数:197372891人。参加状況:3パーティー、30名のプレイヤー、30名生存中』
城内では、三十名のプレイヤーが三つのパーティーに分かれ、小声で情報を交換していた。
「隊長、情報によるとこのダンジョンはボスが二体しかおらず、しかもボスを撃破する以外のクリア方法があるとのことです」
一人の血族プレイヤーが、彼らの隊長であるセバスチャン・デルヴィンに報告した。
「ボスが二体?」
セバスチャンは自身の水晶の片眼鏡を指でなぞる。
「国王と姫か?」
「はい。しかも、姫が弱点だと考えられています」
さほど離れていない場所に立つオリバーモント——月塔隊の隊長は、両目を白い絹布で覆っていた。それは彼の予言能力の代償である。彼は訝しげに問いかけた。
「このダンジョンの報酬は、なぜこれほどまで豪華なのでしょう? 何か罠があるように感じます」
「これは陣営対抗ダンジョンだからだ」
グレイソンスターリングが冷ややかに言った。彼は無双隊の隊長で、腰にはSSS級の短刀『月牙』を差している。
「三つの種族が、国王の寵愛を競い合う必要がある」
その時、宴会場の中央に立つ一つの人影に、全プレイヤーの注意が引きつけられた。
私は食卓の主賓席の傍らに立ち、頭上には【色好みの飾り姫:シルヴィアラモ】というカーソルが浮かんでいる。
私の肩には一羽の小夜啼鳥がとまっていた。宝石のルビーのような瞳と、奇妙な紋様が煌めく金茶色の羽を持つ鳥だ。
目の前で警戒するプレイヤーたちを見つめ、私は優雅な笑みを浮かべた。
「ようこそ、遠路はるばるお越しの客人の皆様。国王の晩餐会は、間もなく始まります」
ほぼ同時に、三十名のプレイヤーは一斉にそれぞれの探査アイテムを取り出し、私と肩の小夜啼鳥に向けた。彼らはすぐさま攻撃陣形を組み、この怪しげな執事——つまり私に、攻撃を仕掛けようと身構える。
面白いね。出向初日から、なめられたものだ。
私は優雅な立ち姿を崩さず、静かに告げた。
「客人の皆様、晩餐会の開始前に従者を攻撃なさるとは、大変無作法な振る舞いですよ」
その言葉が終わるや否や、全ての探査アイテムが突如として水晶の破片と化して砕け散った。プレイヤーたちは自分たちのスキルが使用不能になっていることに気づき、愕然とする。そして見えざる力によって、全員が食卓の席に強制的に着かされた。
システムの警告音が鳴り響く。
『強大な外部干渉を検知。ダンジョンに異常事態が発生しました。ダンジョンレベルを変更:危険度を★★★★★★★★★★に上昇、クリア予測率を0.00714%に下方修正』
『ダンジョン特殊ルール:晩餐会中はアイテム使用禁止、スキル使用禁止、天賦使用禁止』
プレイヤーたちが顔を見合わせる中、システムは彼らの恐怖を察したかのように続けた。
『補償として、システムより七つの隠しルールを提供します』
一、国王は城外で狩猟中であり、七日後に帰還する。
二、色好みの飾り姫は、全てのプレイヤーを注視している。
三、姫は国王が唯一寵愛する至宝であり、古城の全ての秘密を知っている。
四、古城は国王に属し、何人も国王の意志に逆らうことは許されない。
五、姫は毎晩九時に庭園へ向かう。
六、姫の寵愛を得れば、古城を早期に離れることができる。
七、毎日晩餐会に参加し、正しい食事と席を選べば、姫の信頼を得られる。
八、国王は全てを知っている。
『プレイヤーの皆様の健闘を祈ります』
システムはどこか後ろめたそうに付け加えた。
「よくもまあ、我々の健闘を祈れたものですね!」
セバスチャンデルヴィンが皮肉を口にする。その優雅な立ち居振る舞いには、数世紀にわたる貴族の気品が滲み出ていた。
オリバーモントは眉をひそめる。彼は、私が放つ尋常ならざる気配を感じ取っていた。両目が白い絹布で覆われていても、なお何かを看破しているかのようだ。
一方、グレイソンスターリングは腰の『月牙』をそっと握り締め、すでに狼の本性を現し始めたその目で、私の肩にいる小夜啼鳥を油断なく見据えている。
私は微かに笑みを浮かべ、指先で小夜啼鳥の羽をそっと撫でた。
このゲームは、まだ始まったばかりだ。
