第3章
「これが預言にあった『弱く哀れ』な姫君とやら?」
無双ギルドのチャットチャンネルで、一人のプレイヤーが不満の声を上げた。
「指一本で俺なんか灰にされちまうぞ!」
別のプレイヤーが、恐怖を滲ませた声で同調する。
「オリバー・モントの預言は完全に俺たちを騙すためのものだ! あんなに高額な料金を取りやがって! どっからどう見ても悪徳商人じゃないか!」
「忘れるな。オリバーは以前、このダンジョンには女性は参加しない方がいいと預言していた」
誰かが冷静に注意を促した。
「隊長!」
一人のプレイヤーが突然興奮した。
「姫君が色好みなら、隊長のような半狼人のエキゾチックな魅力はきっと気に入るはずです! いっそ、服を脱いで身を捧げてみては?」
グレイソン・スターリングの意識は、別の場所へと集中しているようだった。
時を同じくして、月塔ギルドのチャットチャンネルも大いに盛り上がっていた。
「ボスの実力は完全にダンジョンレベルを超えています。勝てません、本当に勝てません」
あるプレイヤーが絶望的に言った。
「彼女が一瞥しただけで、セバスチャンのSSS級探索アイテム『探墟』が砕け散ったんです」
「隊長、姫君はもうあなたに気があると思います。この攻略の近道を、我々月塔が掴まなくては」
メンバーたちは次々にオリバーを励ます。
オリバー・モントは冷静に応じた。
「私の預言の意味を勝手に曲解しないでください」
昼夜ギルドのチャットチャンネルでは、メンバーたちがオリバーへの不満を口にしていた。
「色香で得た寵愛など、いずれ消え失せる!」
一人の血族プレイヤーが高慢に言い放つ。
「我らが隊長は、その貴族的な雰囲気だけで、この晩餐会で頭角を現すことができる」
別のプレイヤーが誇らしげに宣言した。
「姫君が色好み……我ら血族の隊長にとって、この点はまさに天賦の優位性だ」
セバスチャン・デルヴィンは優雅に水晶のモノクルを押し上げ、仕方なさそうにため息をついた。
夜の九時、三人の隊長は庭園で顔を合わせた。メンバーたちが丹念に整えた出で立ちだ。セバスチャンは仕立ての良い黒の燕尾服をまとい、その蒼白な顔には数世紀にわたる優雅さと冷静さが漂っている。オリバーは半透明の絹の白シャツを身に着け、両目は精緻な白い絹布で覆われ、透き通るような肌が月光の下で微かに光を放っていた。一方のグレイソンは、筋肉のラインを際立たせるダークカラーのタンクトップ姿で、生え始めたばかりの狼の耳がぴくりと震え、SSS級の短刀「月牙」が腰に隠されている。
私は金の鳥籠に入った小夜鳴鳥と共に彼らの前に現れ、優雅に一礼した。
「高貴なるお客様方、こんばんは。国王の庭園へようこそ」
九時の鐘の音が古城の上空に響き渡り、塔に巣食う烏の群れを驚かせた。庭園の雰囲気は、昼間の中世的な優雅さからゴシック調の不気味な恐ろしさへと一変する。空気中には、幼くも不気味な童謡が響き渡っていた。
「我が血を分かち飲め、遥々来たりし狩りの獲物たちよ……」
三人の高位プレイヤーは即座にそれぞれの種族の戦闘態勢に入った——セバスチャンの瞳は真紅に染まり、グレイソンの指先からは鋭い爪が伸び、そしてオリバーの身体は一層幻のように揺らぎ、まるで夜の闇にいつでも溶け込んでしまいそうだった。
突如、システムのアナウンス音が全員の耳元で鳴り響いた。
【サイドクエスト発生:花のない王室庭園】
【隠しルール一:国王は花を愛でる。花を傷つけるいかなる行為も厳罰に処される】
【隠しルール二:庭園で真実を語る花は一輪のみである】
【隠しルール三:庭園の奥深くには国王の宝が埋まっている。持ち去るには主人の許可が必要である】
【隠しルール四:花々に自らの物語を語ることで、その秘密と引き換えることができる】
【隠しルール五:すべての花は、同じ一つのものを恐れている】
その声が消えるや否や、庭園に異変が生じた。それまで美しかった花々が、突如として血塗られた口を大きく開き、鋭い牙を剥き出しにして、低い唸り声を上げ始めたのだ。
三人の隊長はこの奇怪な光景を前にしばし沈黙し、それぞれの武器に手をかけ、警戒しながら周囲を見回した。
私は微笑みながら問いかける。
「このサイドクエスト、三人の勇敢なるプレイヤーの皆様は、お受けになる興味はございますか?」
