第10話 彼の去り
この声。聞き覚えがある。
彼女はケーキではなく、私に刃を向けた。何が起きているのか、脳がすぐには処理できなかった。馬鹿げたヒールを履いて後ろによろめいた拍子に、ヴァレンティノのドレスにあしらわれたラインストーンが、鈍い光を捉えた。
私たちの間に、悠真が現れた。ただ――そこに。まるで虚空から現れたかのように。彼が彼女の手首を掴んだ瞬間、刃がその手に食い込み、二人とも激しく床に倒れ込んだ。
血。彼の血だ。
給仕のマスクがずれ、怒りに歪んだ顔が露わになった。池田花子だ。荒い息をつきながら、まだナイフを握りしめている。
「谷口柚希!」彼女は叫んだ。「あんたが、すべてを壊したのよ!...
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チャプター
1. 第1話 切り札
2. 第2話 二人でこのゲームをプレイできる
3. 第3話 グローブを外して
4. 第4話 ゲームオン

5. 第5話 復讐

6. 第6話 自ら墓穴を掘る

7. 第7話 復讐の嵐

8. 第8話 中古品

9. 第9話 お金で問題を解決する

10. 第10話 彼の去り


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