第5話 復讐

バーカウンターでシャンパンを片手に、私は大塚健があの苦虫を噛み潰したような顔で、ずかずかとこちらへやってくるのを眺めていた。恋人にでもさんざん絞られたのだろうと、一目でわかる表情だ。

またか。

「大塚さん」振り返らずに、私は言った。「用件だけ言ってくださる?」

「君のところのデザイナーが、花子にきつく当たってるらしいな」

時候の挨拶もなし。実に単刀直入だ。

「彼女はこのコラボに、全力で取り組んでるんだ」

ようやく彼の方を向き、片眉を上げてやる。

「へえ、そうなの?」

「いいか、俺が彼女をオープニングに推薦したのは、実力があるからだ」彼は眼鏡の位置を直した。昔からの、緊...

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