第4章 内心で葛藤する女性
東山美咲の喜びは、俺の冷静な声に遮られた。彼女は信じられないといった様子で俺を見つめる。
会社では彼女がマネージャーで、俺は従業員。彼女は気分が悪いというだけで、いつでも俺を罵り、呪いの言葉を浴びせてきた。俺はそれに反論することさえできない。そんなことをすれば、仕事を失うからだ。
カリフォルニアで職を失うのは、非常に恐ろしいことだ。いや、どこであれ、それは恐ろしいことに違いない。
まあ、その話はもういい。今回の生死の境を彷徨う経験を経て、俺はもう決めていた。たとえ生きて帰れたとしても、仕事は辞めて、自分の好きなことをして生きていこうと。死に直面して、多くのことが吹っ切れたのだ。
だから、辞めるつもりの仕事のことで、東山美咲を恐れる理由などない。
もちろん、彼女が俺を助けてくれたのは事実だ。俺も彼女を見殺しにはしない。だが、苦労して手に入れた食料を、無償で彼女にくれてやるつもりはなかった。
「斉藤飛鳥、自分が何を言っているのか分かっているの? 私があなたを助けたのよ」
「ええ、助けてもらったことは分かっています。俺もあなたを助けます。ですが、それはあなたが俺の食料を好き勝手に自分のものにする理由にはなりません」
「私もあなたに食料をあげるわ。でも、どう分配するかは、私の考えで決めるべきよ」
それが俺の考えだった。彼女が俺のために奉仕しないのであれば、食料はやる。だが、それは彼女が餓死しない程度のもので、満腹にさせるつもりはない。
彼女の性格は、やはり気に食わない。腹一杯食わせれば、彼女は現実を忘れ、また以前のような態度で俺に接してくるだろう。それは俺が望むところではなかった。
「何が欲しいの? お金? あげるわ。食料をくれるなら、帰ったら大金をあげる。昇進だってさせてあげるわよ?」
東山美咲は歯を食いしばって俺を睨みつける。今の彼女が、俺を噛み殺したいほど憎んでいるのは分かっていた。だが俺としては、むしろ俺のペニスを咥えてほしいくらいだ。もちろん、あまり強く噛まれては困るが。
「いやいや、金なんて何になるんですか。いつ帰れるかも、そもそも帰れるのかさえ分からないのに。金も昇進も、俺が欲しいものじゃありません」俺はハタを抱えて砂浜に戻り、銛を然るべき場所に置くと、死んだハタを丁度いい場所に横たえた。
それから一歩、また一歩と密林へ向かう。去り際に、俺は意味深長な視線を東山美咲に送った。俺の視線は侵略的で、特に彼女の体つき、その巨大な乳房に注がれていた。服に包まれていても、彼女の乳房は際立って大きく、形も非常に美しい。
正直、かなり好みだ。
東山美咲は腕を組み、脚を固く閉じた。彼女は俺の視線を読み取り、俺が何を欲しているのかを理解したのだろう。屈辱と怒りを感じ、俺を助けたことさえ後悔しているに違いない。
しかし、密林から響く獣の咆哮が、彼女を急速に現実に引き戻す。俺を助けたのは間違いだったかもしれない。だが、助けなければもっと大きな間違いだった。自分一人では、この島で生きていけないことを彼女は知っているからだ。
彼女は葛藤しながら砂浜の魚を睨みつける。その目には貪欲と渇望が渦巻いていた。俺の背中を一瞥し、魚を盗もうかと考えたが、俺の言ったあの言葉を思い出す。
そうだ、もう帰れないかもしれない。帰るには、とても長い時間がかかるかもしれない。
そんな長い時間の中では、魚一匹では問題は解決しない。
仕方ないわ。もし彼がどうしてもと言うのなら、くれてやればいいじゃない。生きてさえいられれば……東山美咲はそう自分に言い聞かせる。しかし、その考えが浮かんだ途端、猛烈な悔しさがこみ上げてきた。
俺に屈服するのが我慢ならないのだ。彼女はふと、俺の銛に目をやった。
東山美咲は銛を手に取った。自分で食料を手に入れようと試みるつもりだ。もし成功すれば、俺に支配される必要はなくなる。
一回、二回、三回。
俺が乾いた枝を抱えて砂浜に戻ってきた時も、東山美咲はまだ執拗に努力を続けていた。すでに夜が近づき、空は薄暗い。彼女は邪魔な上着を脱ぎ捨てていた。
薄く小さなパンツ一枚の姿で、海辺で奮闘している。しかし、今はもう満ち潮で、浅瀬は深くなり、光も足りない。
彼女に魚が捕れるはずがなかった。
ただ、その後ろ姿はやはり美しい。大きな尻は非常に反り返っており、見るからに思い切り揉みしだくか、力強く叩いてみたくなる。
もし彼女の後ろから挿れ、力いっぱい突き上げたら、尻にぶつかるその音は、きっと素晴らしいものに違いない。
俺は拾ってきた枯れ枝を置き、ゆっくりと彼女の背後に近づくと、そっと彼女を抱きしめた。その豊満で柔らかな体は、女特有の香りを放ち、呼吸と共に俺の鼻腔へと深く吸い込まれていく。
一瞬で、俺のペニスは再び鉄のように硬くなった。
「諦めろ。あんたに魚が捕れるわけがない。そんな能力はないんだ。あんたは俺の成果しか見ていないが、その裏で俺がどれだけ努力したかなんて考えもしなかっただろう」
「うう……このクソ野郎! 私にだってできるわ! あんたなんかに辱められたくない! 私はあんたを助けて、食料だって分け与えようとしたのに、どうしてこんな仕打ちができるの?」男の体に包まれる温かさを感じ、東山美咲は一瞬、本当に負けを認めてしまいたくなった。このまま弱く、この男の胸に寄りかかり、自分の体で相手を喜ばせ、食料を手に入れて救助隊が来るまで耐え凌ぐのも、悪くない選択かもしれない。
どうして自分にここまで厳しくしなくてはならないのか?
東山美咲は何度も自問する。だが、どうしても悔しくてたまらない。
男の硬いペニスが、すでにパンツ越しに、両脚の間の秘境を侵そうとしているのを感じる。
分かっている。自分がただ腰をかがめ、両脚を開き、自らパンツを脱いで、背後の男の陵辱を受け入れさえすれば、この無人島でそれなりの生活を送れることを。少なくとも、腹一杯は食べられる。
確かに少し興奮はしていたが、それ以上に吐き気を催していた。
無理やりなら、まだ自分に言い訳ができる。だが、自ら服従するなど、彼女には到底できなかった。
彼女は傲慢なのだ。若くして会社の重要部門のマネージャーにまでなった。彼女には傲慢でいるだけの資本がある。今まで見下してきた、自分の部下である小僧に、この体を好き勝手に辱められたくはなかった。
「だめ、やめて。私は同意しない」東山美咲はもがいて俺の腕から逃れた。彼女は振り返り、悔しさと怒りに満ちた目で俺を睨みつけた。
「そうですか。まあ、よく考えてみてください」俺は少し残念に思いながら一歩下がる。さっきペニスを東山美咲の尻に押し当てた感触は、確かに最高だった。
だが、無理やりあんなことをするつもりはない。その必要もないと思っている。
今の東山美咲が、表面上は強がっていても、内心はひどく脆いことは分かっている。本当に飢えを味わい、真の危険に直面すれば、彼女は屈服するだろう。
かつて会社で高みにいた東山美咲が、一歩ずつ服従へと向かう様を見届けることは、肉体的な快楽よりも、ずっと俺を愉しませてくれる。
今の俺は、成熟し自信に満ちた猟師のようだ。獲物がやってくるのを待ち、獲物が自ら俺の仕掛けた罠に足を踏み入れるのを待っている。
俺は体の衝動を抑え、名残惜しそうに東山美咲の起伏する豊満な乳房を一瞥すると、微笑を浮かべて砂浜へ戻った。
そしてライターを取り出し、枯れ枝に火をつける。この寒い夜に、燃え盛る炎は十分な暖かさをもたらしてくれた。
ライターは常に持ち歩いているものだ。本来ならタバコも一箱あったはずだが、今はどこかへ消えてしまった。不幸中の幸いで、ライターは残っていた。
もっとも、この宝物がなくても、火を起こす方法は他にもある。例えば、木を錐もみして火を起こすのも、悪くない方法だ。
これは、サバイバル番組を見て学んだ知識だ。
今の俺は、かつての自分に心から感謝していた。あの頃、あれほど熱狂的にサバイバルにハマっていた自分に感謝している。
知識こそが、最も偉大な財産なのだ。
