第5章 要求

実際のところ、無人島の夜は恐ろしい。昼間は酷く暑くて気力を奪われるというのに、夜は凍えるほど寒いのだ。

初めて経験するそんな夜に、俺の準備は万全とは言えなかった。起こした火はそれほど大きくなく、俺たちはできるだけ炎に身を寄せ合うことで、寒さを凌ぐしかなかった。

唯一嬉しかったのは、焼き魚がたいそう香ばしかったことだ。食塩などの調味料はないが、空腹がそんな些事を忘れさせてくれる。無人島で作ったこの焼き魚こそ、世界で一番美味い食い物だとすら思えた。

ハンバーガーも、美味いフライドチキンとポテトも忘れて、俺はただ夢中でそのハタに齧りついた。お世辞にも上品とは言えないその姿に、東山美咲は...

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