第16章 探り

警備員の顔が瞬時にこわばり、気まずさで手の置き場に困った様子で、長谷川寂にタバコを差し出した。「た、タバコは吸われますか?」

長谷川寂はゆっくりと身分証をしまうと、冷たい視線を向けた。俺がタバコを吸うように見えるか、とでも言いたげな顔だ。

警備員はひどく気まずそうで、こんな状況に遭遇したことがないのだろう。「警部殿、我々の社長は——」

彼の言葉が終わる前に、見慣れた人影が目に入り、慌てて手を振った。「社長、綾瀬社長!」

長谷川寂と加藤紹輝は同時に、彼が呼びかけた方向に目を向けた。

ちょうど車から降りてきた男。長谷川寂が最初に目にしたのは、その男の、まるで俗世と無縁な精緻な顔立ちだった...

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