第19章 特権

どの被害者も、切り取られた部位は極めて専門的な手口によるものだった。

特に石田雯の切り取られた顔は、佐久本令朝の言葉を借りれば、トップクラスの医師にしかできない所業だという。

長谷川寂がゆっくりと車を走らせる。加藤が窓を開けると、冷たい風が吹き込んできて、二人ともぶるりと身を震わせた。

弱々しい陽光の下、長谷川寂の髪先の赤が、どこか炎のように見えた。

加藤紹輝は目を半ば閉じ、長谷川寂をじっと見つめながら低い声で言った。

「菅原さんに電話して、綾瀬子濯の足取りを調べさせてくれ。よく行く場所、持ってる職業技能、それから奴の資産もだ。病院と関係があるかどうか見るだけでいい」

少し考え、...

ログインして続きを読む