第24章 狂った

佐久本令朝はしばらくその女を見つめていた。

どう見ても、電話口で古川惜之を罵るような人物には思えなかった。

一見すると、とても温和な人だ。

すると、佐久本令朝の隣に立っていた長谷川寂が、彼女の心を見透かしたかのように言った。「人は見かけによらねえ。他人の腹の中なんざ、分かりゃしねえんだ」

佐久本令朝は頷いた。

長谷川寂は続ける。「綾瀬子濯は立川婉を気に食わねえ。そこまで気にかけてるってんなら、立川婉の両親の前で、奴の化けの皮を剝いでやる」

佐久本令朝は尋ねた。「長谷川隊長、どうして綾瀬子濯がそんなことを気にすると確信できるんですか?」

長谷川寂はゆったりと彼女に一...

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