第30章 絶殺

長谷川寂の顔は、今にも水が滴り落ちそうなほど陰鬱としていた。今は怒りを抑え、部下を率いて全員をまず救出するしかなかった。

外は消防隊員で溢れ、病院全体が燃え盛っており、鎮火にはしばらく時間がかかりそうだった。

彼らが一緒に飛び出すと、皆、顔が煤で汚れていた。

佐久本令朝は軽く二度咳き込み、長谷川寂に向かって微笑んだ。

長谷川寂は奥歯を舌で舐め、山河を揺るがすほどの声で怒鳴った。「佐久本令朝! 単独行動はするなと言ったはずだ! 死にてえのか?」

菅原凱捷たちは、一言も口を挟めずにいた。

以前なら、長谷川寂が女の子にあまりにも辛抱が足りないと、少なくとも数言は非難しただろう。

佐久本...

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