第31章 畑川淮

佐久本令朝はフンと鼻を鳴らし、綾瀬子濯の言葉など意にも介さず病室を出た。すると、長谷川寂と加藤紹輝が複雑な表情で立っているのが見えた。

長谷川寂は僅かに目を細め、先に口を開いた。

「よし。お前、他に怪我はねぇみてぇだし、署に戻れ。きっちり始末書を書きやがれ」

佐久本令朝は渡りに船とばかりに言った。

「はい。ありがとうございます、長谷川隊長」

佐久本令朝が遠ざかっていくと、加藤紹輝はその背中から視線を外し、長谷川寂に尋ねた。

「長谷川隊長、朝ちゃんってどんな人間だと思います?」

長谷川寂は彼を一瞥した。

「あんだけ彼女を気に入ってるお前が知らねぇのに、俺が知ってると思うか?」

加藤紹輝...

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