第43章 いい腰

佐久本令朝は長谷川寂に向かって唇の端を吊り上げた。「長谷川隊長、それはどういう意味です?」

「まさか、女の子は見識が広くてはいけないとでも?」

長谷川寂は奥歯を舌でなぞった。

無垢な様は、実に彼女の保護色だ。

佐久本令朝は再び俯き、低い声で訴えるように言った。「長谷川隊長はずっと私を信用してくださらないようですね。でしたらこのご遺体、私が検めるべきでしょうか? いっそ、古川局長に電話して、別の法医を探し直してもらいましょうか……」

「まあ、隣の管区の法医が最近少し忙しくなるだけでしょうけど」

長谷川寂が一つ問いかけると、佐久本令朝は三つの言葉を用意して彼を待ち構えていた。

加藤紹輝が肘で長谷川...

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