第50章 明牌

佐久本令朝は足を止め、無意識に振り返った。さほど離れていない場所に、長谷川寂が立っていた。手には携帯電話を持っていない。

彼の眼差しには深い意味が込められていた。「佐久本先生は周防譲青のことを随分と気にかけているようだ。以前、望んだ答えは得られなかったのかな?」

佐久本令朝は今更ながら気づいた。先ほど自分が身だしなみチェック用の鏡の前に立った時から、彼の術中に嵌っていたのだと!

佐久本令朝はぐっと奥歯を噛みしめた。

くるりと踵を返し、法医学室へと向かう。背後から、男が気だるげについてくる。

ドアが閉まる寸前、長谷川寂が手を差し入れてそれを阻んだ。

法医学室にいた二人のアシスタントは...

ログインして続きを読む