第51章 不眠

佐久本令朝は笑いながら主人に言った。「旦那さん、持ち帰りにしてください。持って帰って飲みますから」

彼女はひどくばつが悪そうに言った。「もう閉めるって知ってたら、明日にでも来たのに」

夏川江樹は温和な笑みを浮かべた。その佇まいは雅やかで気品がある。「構いませんよ。お茶一杯のことですし。店内で飲んでいってください。そのあと、ぶらぶら帰ればいい」

佐久本令朝は瞬きをした。「ご迷惑じゃないですか?」

夏川江樹は首を横に振った。

佐久本令朝は珍しく恭しく命令に従うことにした。

彼女は空いていた綺麗なテーブルを見つけて腰を下ろした。

ほどなくして、黒田家の三番目の旦那が淹れたての安眠茶を持...

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