第55章 お金持ち

帰り際、長谷川寂は尋ねた。

「葉山さん、今はお仕事は?」

葉山明遠は首を横に振った。

「では、今の生活は林田尽染さんが?」

葉山明遠は認めたくないのだろう。ヒモというのは、どんな男にとっても自尊心を傷つけられるものだ。

しかし、彼にできるのは頷くことだけだった。

今の彼は、確かに林田尽染に食わせてもらっている。

「長谷川隊長」

佐久本令朝が彼を呼んだ。

長谷川寂が彼女の方を見ると、佐久本令朝はクローゼットの前に立ち、封のされていない封筒を手にしていた。

「長谷川隊長、ここに手紙が」

長谷川寂は彼女の方へ歩み寄り、二歩でその前に立った。佐久本令朝の視線が葉山明遠...

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