第57章 自私

高田聴は一瞬呆然とした。「あんた、人は殺してないって言ったじゃない! なんで警察が来るのよ?!」

高田聴は葉山明遠の腕をいきなり掴んだ。その眼差しは緊張に満ちており、嘘には見えない。

葉山明遠は首を横に振った。「確かに俺は彼女を殺していない。俺じゃない。だが、俺が知る限り、彼女は自殺するような人間でもない」

長谷川寂と佐久本令朝は高田聴の表情を観察する。彼女の顔はいくらか青ざめていたが、明らかに安堵の色も浮かんでいた。

「葉山さん」長谷川寂が冷たく口を開いた。「説明してもらおうか。浮気はしていないと、あれだけ断言していたはずだが?」

葉山明遠は後ろめたそうに、彼の顔を見ることができな...

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