第61章 催眠

法医室は静寂に包まれ、長谷川寂は一層気まずさを感じた。

佐久本令朝が再び作業を始めると、二人のアシスタントも手伝いに入ってきた。長谷川寂は薬理の知識がなく、身を翻して立ち去ろうとしたその時だった。

一人の警官が林田の母を連れてくるのが見えた。

林田の母は深く悲しんでおり、今も目元が赤い。「お巡りさん、娘は自殺じゃないんですよね?」

長谷川寂は振り返って佐久本令朝に視線を送り、林田の母との交渉を彼女に任せることを示した。

佐久本令朝は歩み寄った。「現時点では他殺の可能性が非常に高いです。関連する手がかりをまとめ、その点を証明していくつもりです」

「彼女の胃の中から、多くの精神系の薬物...

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