第66章 偶然

長谷川寂は眉をひそめた。

「あんたのことは、遠藤萌と呼ぶべきか、それとも阿部書竹と呼ぶべきか」

長谷川寂の目の奥に浮かんだ疑念を見て、佐久本令朝は直接言った。「長谷川隊長、連行しましょう」

佐久本令朝は阿部書竹と旧交を温める気すらさらさらないようだった。

阿部書竹は気だるげに手首を差し出し、長谷川寂が手錠をかけるのを見ていた。

「妹弟子、あたしが人を殺したのよ。褒めてくれないの?」

阿部書竹は微かに笑う。

佐久本令朝は彼女の影響を全く受けず、言った。「あなたが殺したかどうかは、証拠で語ってもらいます」

二人は彼女を連れ帰った。

阿部書竹は長谷川寂に尋ねた。「こちらの刑事さん、...

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