第70章 味

長谷川寂は彼女を見つめ、鼻で笑った。「あからさまに規則違反をしろと?」

「手伝ってほしいだけです」佐久本令朝は口元に笑みを浮かべ、瞳の奥には淡い懇願の色を滲ませ、弱みを見せた。

長谷川寂は奥歯を舌で舐めた。

とことん芝居を打ってくれる!

長谷川寂は深く息を吸い込んだ。「事件に関わることなら、考えてやらんでもない」

佐久本令朝は心の中でため息をついた。彼に規則を破らせるのは、やはり少し酷だったか。

彼女はうなだれて、中へと歩いていく。

長谷川寂の心に、理由もなく罪悪感が込み上げてきた。

長谷川寂は足を踏み出し、二歩で彼女を追い越した。「そっちも事件に結びつけた方がいいだろうな。だ...

ログインして続きを読む