第4章 帰宅
藤原炎一は写真を拾い上げ、その内容を見て目を見開いた。
写真には目を閉じている自分と、同じく目を閉じて幸せそうに横たわっている橋本優子の姿が写っていた。
この角度から見ると、まるで二人が同じベッドで長い時間を過ごしたかのようだった。
しかし、彼は橋本優子に対して一度も不適切な行動を取ったことはなかった。あの日も、彼女が仕事で疲れて少し休んでいただけだった。
信じられない思いで他の写真も拾い上げると、そこにも例外なく彼と橋本優子の「親密な」様子が写っていた。唯一共通しているのは、彼が寝ているか仕事をしているかで、決してカメラを見ていないことだった。
それでも、写真の内容は十分に想像を掻き立てるものだった。
鈴木直美が離婚を迫ったのは、これらの写真が原因だったのだろう。
「橋本優子!」
藤原炎一は歯を食いしばり、目に怒りを宿した。
橋本優子は二人の離婚を聞いて喜ぶ間もなく、突然投げつけられた写真に頭が真っ白になった。
「違います、炎一さん!私、この写真のことなんて何も知りません!直美さんです、きっと彼女が盗撮して陥れようとしたんです!」
説明しようとする彼女の言葉を、藤原炎一は冷たく遮った。「もういい!お前の策略なんて見透かされているんだ」
一枚の写真を橋本優子の前に投げつけると、彼女は顔を掠められそうになって慌てて手で防いだ。写真には自撮りする自分と、真剣に仕事をする藤原炎一の姿が写っていた。
鈴木直美のバカ!こんな写真まで印刷するなんて!
殺す気か?
橋本優子は心の中で鈴木直美を呪いながら説明しようとしたが、藤原炎一は聞く耳を持たず、携帯を取り出して鈴木直美に電話をかけた。すべてを説明しなければならない。
誰が妻であろうと気にしていなかったし、この妻に特別な感情もなかった。しかし、忠誠という言葉の意味は知っていた。結婚している以上、浮気などするはずがなかった。
もし橋本優子の輸血が必要でなければ、鈴木直美とこのまま一生を過ごすことだってできただろう。
電話をかけても誰も出ない。もう一度かけ直すと、話し中の音が聞こえた。
鈴木直美が...ブロックした?
藤原炎一は顔を曇らせ、ボディーガードを呼んだ。
「すぐに奥様を連れ戻せ!」
「はい!」
ボディーガードはすぐに出発したが、十分後に戻ってきた時の表情は妙だった。
「社長、奥様が...消えました」
藤原炎一は眉をひそめた。「どういうことだ?」
何が消えたというのか?
ボディーガードたちは顔を見合わせ、一人が一歩前に出て言った。「奥様は病室を出られて、エレベーターで降りた後に...姿が見えなくなったんです!」
「なんだと?」藤原炎一の眉間にしわが寄り、不吉な予感が胸をよぎった。「すぐに捜索を開始しろ。病院の監視カメラを確認して、誰が連れ去ったのか調べろ!」
藤原炎一は緊張した様子で、ボディーガードたちはすぐに行動を開始し、鈴木直美の捜索に向かった。
去り際、藤原炎一は橋本優子を振り返り、冷たい目で見つめた。「直美に何も起きていないことを祈るんだな」
そう言い残すと、橋本優子がどれだけ呼びかけても振り返ることなく立ち去った。
鈴木直美が目を覚ますと、豪華な装飾が目に入った。周りはシンプルながら贅沢な内装で、イタリアン・スタイルの豪邸は見覚えがあり、安心感を覚えた。
思わず、涙が零れ落ちた。
横から伸びてきた手が、その涙を優しく拭った。男の低い声が響く。
「なぜ泣く。家に帰ってきたんだ」
鈴木直美が男の方を向くと、高貴で冷たい表情の中に、彼女を見つめる優しい眼差しがあった。
