第6章

 婿選びの宴から三日。街は表面的には平穏を取り戻していたが、水面下では不穏な空気が渦巻いている。

 土屋家は表立って敵対こそしないものの、裏での工作は止む気配がない。だが、前世の記憶を持つ私には、すべて織り込み済みだ。

 たとえば、今日の午後予定されている南埠頭への視察。

 前世において、私はこの道中で「不慮の事故」に遭い、足を骨折して三ヶ月もの寝たきり生活を余儀なくされた。恵司はそんな私を甲斐甲斐しく看病し、食事を食べさせ、体を拭き、冗談で笑わせてくれたものだ。当時の私は、その優しさに涙が出るほど感激していた。

 けれど、二度目の人生を歩む今、数々の違和感がパズルのピースのように繋...

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