第2章
数時間後、みんなはまるで宝くじにでも当たったかのように、新しい金持ち生活の計画を立てていた。
私はツインベッドに横になり、隣の部屋から聞こえてくる和也と大輔の会話に耳を澄ませていた。まるで専門家気取りで「投資戦略」について語り合っている。眠れなかった。目を閉じるたびに、今日の祖母の笑顔と、二ヶ月前のあの恐ろしい日が頭をよぎる。
私はこの家族の歴史を理解しているつもりでいた。でも今になって、これまで一度も疑問に思ったことのない事柄がたくさんあったことに気づく。どうして祖母は、他の誰ともあんなに違うんだろう? どうして決して言い返したりしないんだろう? どうして、たとえ最悪の仕打ちを受けても、いつもすべてを受け入れてきたんだろう?
そっとベッドを抜け出し、床の軋むあの場所まで歩いた。隣の部屋からは和也のいびきが聞こえてくる。でも、居間のほうからはまだ光が漏れていた。ドアの隙間から覗くと、祖母が食卓の椅子に座っているのが見えた。目を覚ましたまま、まるで何かを待っているかのように。
窓の外を見ていたけれど、その表情は完全に一点に集中していた。私がずっと知っていた、あの疲れて打ちひしがれた女性ではなかった。これは……別人だった。
私は部屋から忍び足で出た。「おばあさん? 大丈夫?」
祖母は少しも驚いた様子なく私を見た。「お前が出てくるだろうと思ってたよ。昔から利口すぎたからね、お前は」
私は向かいの椅子に腰を下ろした。「今日のあの電話……驚いてなかったよね?」
「ううん、驚いてないよ」
「もう知ってたんだ」
「二ヶ月前から知ってた」
心臓が速く打ち始めた。何もかもが永遠に変わってしまうと悟る、まさにそんな瞬間のひとつだと感じた。
「本当のことを教えて.......」
祖母は長い間、私の顔をじっと見つめていた。「本当に知りたいのかい? 一度話してしまったら、もう知らない頃には戻れないんだよ。それに、私が計画していることは……」
「知りたい」
そのとき、祖母の表情に何かが変わった。まるで、何かとてつもなく大きなことを私に託していいか、決めかねているようだった。彼女はため息をつき、その顔には突然、五十五歳という年齢がくっきりと浮かび上がった。
「私が若かった頃、お前くらいの歳の時だったかね。どうして自分がこの人たちとこんなに違うんだろうって、不思議に思い始めたんだ。和也の一家は……愛し方を知らない。奪うことしか知らないんだよ」
私は、和也が祖母に怒鳴りつけ、大輔が彼女を奉公人のように扱い、真由美が必要な時以外はまるで彼女がいないかのように振る舞うのを、何度も見てきたことを思い出した。
「質問し始めた。どうして私は誰にも似ていないの? どうして私の血液型はこんなに珍しいの? どうして私が病気になると、まるで厄介者みたいに扱われるの?ってね」
彼女は言葉を切り、テーブルの上で手を組んだ。
「でも、私が質問するたびに、和也は……怒った。**お前には他に行くところなんかない、お前を欲しがる奴なんていやしないんだって、私に言い聞かせた。**ここに置いてもらえてるだけでも幸運なんだと、私に信じ込ませたんだ」
「ひどい……」
「それが普通だと思ってたのよ、空。女はみんなこうやって生きるんだって。夫に仕え、子供を産み、決して文句を言わない」
その言い方で、彼女の物語にはまだ続きがあるのだと悟った。私は深く息を吸い込み、ずっと気になっていた質問を口にした。
「おばあさん、母が生まれる前……母にお姉さんはいたの?」
祖母の顔が、とても悲しげに曇った。「三人もいたよ。お母さんには、三人の姉がいた」
三人のお姉さん? 聞いたこともない。
「その人たちはどうなったの?」
「和也は……息子が欲しかったんだ。私が娘を産むたびに、あいつは『これ以上、役立たずの口は養えない』と言った」
血の気が引いた。「どういうこと?」
「**あの子たちを、連れて行ったのよ、空。三人のかわいい赤ん坊をね。**もっといい家が見つかるだろうって言ってたけど……」
声が途切れた。
「それきり、あの子たちには会えなかった。生きているのかどうかさえ、わからない」
吐き気がした。和也があの赤ん坊たちを殺した? それともどこかへやった? 母には、会うこともなく、生きることも許されなかった三人の姉がいたっていうの?
「お母さんだけが助かったのは、あの子が生まれた時、和也が数日間、刑務所にいたからだよ。飲酒運転でね。あいつが出てくる頃には、私はあの子を隣人に預けて隠して、『隣人の赤ん坊を預かっている』とみんなに言ってあった。数ヶ月後にあいつが娘を見た時には、もう大きくなりすぎて、存在が知れ渡りすぎていた。周りに怪しまずに消すことはできなかったんだ」
「なんてこと……」
「でも、それでもあいつは、私があの子を産んだことの代償を払わせた。毎日ね。もっと働かされ、もっと虐待され、お前は厄介者なんだと、もっと言い聞かされた」
祖母が語ることをほとんど処理しきれなかったけれど、すべてを知る必要があった。パズルのピースが、最悪の形で組み合わさっていくようだった。
「二ヶ月前のことを教えて。本当のことを」
祖母の手が、かすかに震え始めた。
「あの日、翔太が転んだ時……私はもう、かなり具合が悪かったんだ。何ヶ月も体のだるさを感じていたけど、口に出せなかった。和也に怠け者だと罵られるからね」
思い出した。あの時、祖母はひどい顔色をしていた。でも、私が医者に行くように言うたびに、和也は決まって激怒した。
「病院に着いて、翔太に血が必要だと言われた時……大輔と真由美はためらわなかった。『こいつのを使え』って大輔が言ったの。『こいつは丈夫だ。耐えられる』って」
「くそ!おばあさんはもう具合が悪かったのに」
「私は死にかけていたんだよ、空。自分が死ぬってわかってた。でも、もし断ったら、もし翔太を苦しませたら……あいつらは決して私を許さないだろうってこともわかってた。可能だとしたら、私の人生をもっとひどいものにするだろうってね」
彼女は台所の窓の外、暗闇へと視線を向けた。
「だから、血を採らせた。ほとんど全部。病院のベッドに横たわって、自分の血が管に流れ込んでいくのを見ながら、こう思ったのを覚えてる。『こうやって私は死ぬんだ。五十五年間、すべてを捧げ続けたあげく、あいつらが唯一気にかけている家族を救うために、自分の本当の血を捧げて死ぬんだ』って」
彼女の言葉が描く光景はあまりに恐ろしく、耳を塞ぎたくなった。でも私は、無理にでも自分に聞かせた。
「私が倒れた時、あいつらは翔太に夢中で、何時間も誰も私に気づかなかった。ようやく看護師さんが様子を見に来てくれた時には、私の血圧は危険なほど低くなっていた。身体の機能が停止しかけていたの」
あのひどい夜を思い出した。和也と大輔は病院の待合室を行ったり来たりしていたが、それは祖母を心配してのことではなかった。ただ、翔太がいつ良くなるのかを知りたかっただけだ。
「医者は緊急治療が必要だと言ったんだけど……」
「でも、あいつらは断った」
「大輔は言ったわ。『大丈夫だ。こいつは丈夫だから』って。そして真由美は言った。『二人分の入院費なんて払えないわ』って」
私は拳を握りしめた。「あいつら、おばあさんを置き去りにしたんだ」
「あいつらは翔太を家に連れて帰って、私を病棟に残していった。支払いの承認も、家族の連絡先もなしにね。病院はついに私を退院させなきゃならなくなったけど、私は弱りすぎて歩いて帰れなかった」
「それで、どこに行ったの?」
「這って行ったのよ」。彼女はそれが世界で最も自然なことであるかのように言った。「病院から高速道路に向かって這って行った。ヒッチハイクできるかもしれない、あるいは……あるいは、道端で死ぬだけかもしれないって思いながら」
病気で血を流しながら、高速道路を這って進む祖母の姿……想像することさえできなかった。
「でも、その時、あの人たちが見つけてくれたの」
「あの人たち?」
「黒崎家の捜索チームの人たちよ。彼らは何年もの間、この地域の病院の記録を監視して、私の珍しい血液型を持つ、行方不明になった娘かもしれない人を探していたの。あの日、私が入院した時に、私の血液検査の結果が彼らのシステムに引っかかったのよ」
私は彼女を見つめ、この運命のねじれを理解しようとした。長年の苦しみの果てに、彼女は人生のどん底で救い出されたのだ。
「高速道路であなたを見つけたの?」
「黒い車が停まったわ。幻覚かと思った。身なりのいい男性が降りてきて、とても穏やかで、とても親切だった。彼は言ったの。『黒崎さん? 私たちはあなたを探していました』って」
黒崎さん。川村さんでも、「おいお前」でも、「ばあさん」でもない。彼らは彼女の本の名で呼んだ。
「彼は私を病院に連れて行ってくれた。生まれて初めて、人々が私の痛みを、意味のあるものとして扱ってくれた」
「何を言われたの?」
「すべてよ。昭和四四年の病院での取り違えのこと。黒崎遥人さんと黒崎美智子さんが何十年も私を探し続けていたこと。私が生きていると信じて疑わず、見つけ出す希望を捨てなかったこと」
彼女の目は涙でいっぱいになった。でも、それは悲しみの涙ではなかった。何か別のものだった。
「五十五年間、私は自分が価値のない人間だと信じていた。誰も私を愛してくれない、誰も私を選んでくれないと信じていた。自分に与えられた人生は当然の報いだと思ってた」
「でも、そうじゃなかった」
「そうじゃなかったのよ、空。私は愛されるはずだった。守られるはずだった。選択肢を持つはずだったの」
彼女が話し始めてからずっと私の心の中で燃え上がっていた疑問が、今、口をついて出た。
「じゃあ、どうしてここに戻ってきたの? どうして本ものの家族と一緒にいなかったの?」
祖母の表情が変わった。あの危険な笑みが戻ってきた。
「やり残したことがあったからよ」
やり残したこと。その言い方に、肌が粟立った。
「どんなこと?」
「空、五十五年間、この人たちは私からすべてを奪った。私の若さ、健康、子供たち、尊厳。私が無価値な人間だと信じ込ませた」
彼女が立ち上がると、その立ち姿に、これまで見たことのない何かが見えた。自信だ。
「今、私は自分が何者かを知っている。自分の価値を知っている。自分が何に値するかを知っている」
「そして、何に値するの?」
「正義」
その言葉は、まるで装填された銃のように私たちの間に漂った。何が彼女をここまで追い詰めたのか、正確に理解する必要があった。
「おばあさん、病院でのあの日……倒れた時……翔太はそれを見ていたの?」
「ええ、もちろん。全部見てたわ」
私はその瞬間を思った。病院のベッドに横たわり、腕に点滴を受け、新鮮な血、祖母の血が体に流れ込む翔太。そして、看護師が祖母の様子を見に駆けつけた時……。
「彼は何て言ったの?」
「彼は言ったのよ。『あいつ、大丈夫なの? だって、後でもっと血が必要になるかもしれないから』って」
