第8章

 ライラは城の廃墟の前に立っていた。

 風が吹き抜け、石片の粉塵がふわりと舞い上がる。彼女は白い月光花の花束を握りしめ、崩れ落ちた瓦礫の山をじっと見つめた。

 やがて視線を落とし、花を砕けた石の上へそっと置く。

 ―――

「妊娠してから、歩くの遅くなったな」

 わたしはヴァリアンをにらみつけた。彼は魔法でリンゴを宙に浮かせ、くるくると皮をむきながら、口元に笑みを乗せている。

 わたしたちは新しく建て直した王宮の大広間にいた。あの爆発で旧城はひどく損壊し、再建には半年もかかった。

「ライラは?」

「廃墟だよ。花を供えに行った」

 わたしは少し黙った。

「もう、半年……」

...

ログインして続きを読む