第107章 2億、家は君に譲る

市川希美の口元が、ほんのわずかに持ち上がる。大げさじゃないのに、機嫌の良さだけは隠しきれていなかった。

中野友香もつられて笑い、市川希美の肩にぽん、と手を置く。

「金もらったら、早川潤ってクソ野郎のこと、もう見逃すのかと思ってたわ」

「ありえないでしょ」

市川希美はくすりと笑い、ふと思い出したようにスマホを取り出した。

「希美、誰に電話するの?」

「伊藤沙梨よ。あの事務所が欲しいんでしょ? じゃあ、くれてやる」

「は?」

中野友香が怪訝な顔をした時には、もう発信音が鳴っていた。

     

一方その頃。

伊藤沙梨は夏川翔太のオフィスで、顔を覆ったままぽろぽろと涙を落とし...

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