第109章 彼とはすでに離婚している

夜――雲上レストラン。

市川希美が約束の個室に早めに着くと、すでに平野希空が先に来ていた。

彼女の姿を見つけた瞬間、希空の顔にぱっと嬉しそうな表情が浮かび、慌てて近寄ってくる。

「市川さん、どうぞ。こちらへ」

声には抑えきれない高揚が滲み、どこか言葉にしづらい熱まで混じっていた。

市川希美は彼を見返し、わずかに居心地の悪さを覚える。

視線が、あまりにも強い。まるで自分が、甘くて食べ頃の菓子にでもなったみたいに。

攻めるような目――正直、好きじゃない。

話題を探して空気を変えようとした、そのとき。

希空は彼女の違和感を察したのか、先に視線を外し、申し訳なさそうに笑った。

「...

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