第11章 じゃあ、どうして君と結婚しないんだ?

「パァン」

乾いた平手打ちの音が響いた瞬間、周囲の空気がすっと凍りついた。

早川潤は顔を背け、信じられないというように頬に手を当てた。じん、と走る痛みが、これは夢じゃないと容赦なく突きつけてくる。

みるみる目が赤く染まり、低い声で吠えた。

「市川希美! 頭おかしいのか! 俺に手を上げるとか、調子に乗ってんじゃねえ!」

希美は、目をひん剥いて怒り狂う彼を見上げながら、背筋に遅れて冷たいものが走るのを感じた。さっき一瞬でも避け損ねていたら――殴られていたのは自分だ。

「先に手を出したのはそっちでしょ。私は正当防衛。何を犬みたいに吠えてんの?」

手をぱっぱっと振って、ぼそりと吐き捨て...

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