第139章 昔の出来事

その声は聞き覚えがない。けれど市川希美は、なぜだか確信してしまった。――いま相手が口にした「希美」は、自分のことだと。

希美の目つきが鋭くなる。中の人間が次の言葉を吐くより早く、彼女はドアを蹴り開けた。

視線を走らせ、三浦爺さんのすぐそばに座る中年男に行き着く。

――こいつだ。

ステージに上がる直前、しつこく腕を掴んで離さなかった男。

希美はまっすぐ歩み寄り、氷みたいな声で言い放つ。

「あなた、私と面識ありましたっけ。私のことに口を出す資格、どこにあるんですか」

言い方は容赦がない。相手の立場など怖れていない、と言わんばかりだ。

――三浦爺さんと同じ席に座れる人間が、ただ者の...

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