第155章 ボール

病室には、声にならない悲鳴と鼻を刺す血の匂いが充満していた。

井口哲は無表情のまま、乱れきった光景を見下ろす。背後へ淡々と言い放った。

「全部、撮ったな。警察署に送れ」

それだけ告げると踵を返し、去っていく。残されたのは、恐怖に震える懇願の声だけ。

「当主……言われたとおり、伊藤沙梨は殺しました……だから捨てないで……捨てないでください……」

井口哲の足が、ふっと止まった。

次いで、口角が残酷に吊り上がる。

軽く手を払う。耳障りな声は、ぱつりと遮断された。

来たときと同じように、彼は病院の出入口まで悠々と歩き、タクシーを拾ってバーへ向かった。

個室に近づいた瞬間、西村智也が...

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