第161章

市川希美は、その裏で起きていたことなど知る由もなかった。

ネットを埋め尽くす報道を眺めても、ただうんざりするだけだ。

伊藤沙梨の手が潰されてから、もう半月。流れてくるのは相変わらず、彼女のスキャンダルばかり。

単なる芸能ゴシップというより、誰かが裏で糸を引き、伊藤沙梨の悪辣さを前面に押し出して何かを覆い隠している――そんな匂いがした。

夏川翔太は、想像していた以上に冷酷だ。

市川希美は指先でタブレットの画面をとん、とん、と叩く。瞳の奥はどこか空っぽで、焦点が合っていない。

ふいに、目の前に温かいミルクが置かれた。

顔を上げると、谷口拓が柔らかな笑みを浮かべて立っていた。声も穏や...

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