第26章 これが人に頼む態度なのか?

伊藤沙梨の顔がぐにゃりと歪む。まるで正気を失ったみたいに、希美めがけて突進してきた。

不意打ちだった。希美は避けきれないまま正面からぶつかられ、よろめく。

立っていた場所が悪い。すぐ背後はプールの縁――。

伊藤沙梨に体当たりされた勢いのまま、希美の身体は制御を失ってプールへと傾いていく。

瞳孔がきゅっと縮む。反射的に手を伸ばし、何かを掴もうとした。

次の瞬間、指先に触れたのは人肌の温もり。

希美はそれを、命綱みたいにぎゅっと握りしめた。

「ぼちゃんっ!」

「きゃっ!」

「希美!」

悲鳴と叫びが連なって、しかしどこか遠い。瞬く間に世界が冷たさで満ちていく。

水が身体を包み...

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