第72章 泣く場所すらない

あの電話以来、夏川翔太は二度と希美に連絡してこなかった。

希美としては願ったり叶ったりで、三浦爺さんの診療所の立て直しに心から打ち込めた。

そんなある日。中野友香が息を切らしながら駆け込んできた。頬が上気し、目がきらきらしている。

「希美、見て! ファンが……ファンがめちゃくちゃ増えてる!」

希美は木板を抱えたまま、きょとんとした。

「ファン? アンチじゃなくて?」

以前の彼女は夏川翔太のマネジャーだったが、実態は盾みたいなものだった。伊藤沙梨が帰国してからというもの、ネットの過激なファンは煽られて、希美に容赦なく悪意をぶつけてきた。

「希美」と名前が出れば、罵声が飛ぶ。そんな...

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