第90章 最悪の事態を想定する

伊藤沙梨は険しい顔で、眉間には焦りがにじんでいた。

けれど夏川翔太の胸に湧いたのは、心配よりも先に苛立ちだった。

眉間を指で押さえ、ほとんど歯を食いしばるようにして問い返す。

「……また、あいつが何かやらかしたのか?」

言い終えた瞬間、伊藤沙梨が一瞬だけ固まった。

翔太自身も、言い方を間違えたと気づく。深く息を吸い込み、荒れた感情を押し殺して声を落とした。

「警察に連れていかれたなら、弁護士に頼んで保釈すればいいだろ」

「それが……保釈、通らないの」

沙梨の胸に引っかかっていた違和感がすっと引き、代わりに早口で事情をまくし立てる。

「希美さんの件のせいで、今ネットが潤に敵意...

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