第91章 人知れぬ過去

夏川夫人の声はどこか甲高く、市川希美は反射的にスマホを耳から少し離した。

向こうのまくし立てが途切れたところで、ようやく耳元へ戻し、距離を置いた口調で言う。

「夏川さん。私はもう、あなたの息子さんとは離婚しています。夏川日向の親権は夏川翔太さんにあります。これから先、あの子のことを私に報告しないでください」

一拍置いて、淡々と続けた。

「それと、あの200億は夏川翔太さんが私に負っているものです。返すつもりはありません」

言い切って通話を切ろうとした、その瞬間。

夏川夫人が、不意に低い声を差し込んできた。

「あなたはもう、私の息子を一人殺した。まだ、もう一人まで追い詰めるつもり...

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