第96章 時間稼ぎ

希美は二人を訝しげに見つめた。鋭い視線が、彼らの瞳の奥に走った一瞬の動揺を逃さない。

――やっぱり。

今日の件は、事故なんかじゃない。

夏川翔太も二人へ視線を向け、苛立ちを隠さない口調で言った。

「沙梨。市川希美が谷口悠人をそそのかして、日向をケガさせたって言ったよな。いったいどういうことだ?」

伊藤沙梨も、夏川日向があそこまで役に立たないとは思っていなかった。よそから来た子どもにやられて病院送りだなんて。

担任教師から電話が来たときも、説明は曖昧だった。谷口悠人と夏川日向の名前だけが耳に残り、さらに「日向くんが病院で治療中」と聞いた瞬間、沙梨は勝手に結論を出してしまった。

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